西加奈子「きいろいゾウ」

オトナの童話。といった印象です。ファンタジーというか。
とある夫婦の物語で、旦那さんが「ムコさん」と、奥さんが「ツマ」。東京から移住して田舎暮らしをしているんですけど、愛がいっぱいあふれてて、なんてことない日常をめいっぱい楽しんでいて、序盤からたまりませんでした。ああああ、こういう生活ができたら!!、なんて軽くトリップ。
主人公のお隣さんで「アレチさん」という方がいるのですが、このキャラがまたいい。大事なところでぱっかり社会の窓が開いちゃってて、もう読んでて泣きながら笑ったり。
途中から急展開で、急流に飲み込まれるがごとく、現実に巻き込まれていきます(あ、ネタバレ?)。あんなに美しかったなんてことない日常が遠く、哀しく感じるほどの。
ここで、ファンタジーに慣れてない方はちょっとついてこれないかも。


正直、最初の読み始めの幸福感だけでワタクシはお腹いっぱいでしたので、最後の方は正直辛かったです。ところどころで挟み込まれるきいろいゾウの童話も、あんまりいらないかも、と思います。
それでも、それらの違和感を補ってあまりあるほどの、序盤の美しい世界にワタシは浸っちゃいました。